引っ越してきたのは中国の上海、経済と金融のインターナショナル・メトロポリタン・シティです。雰囲気でカタカナを並べてみました。
言葉がまったくわからない不安はありますが、外国人の多い大都会ということで、生活に困ることはなさそうですし、日本からの距離も近いことで、心の距離もなんとなく近く、穏やかな日々を過ごしています。
のんびりと過ごしてはいますが、生活面での不安がない街というのと、好きな街かどうかということは全くの別物。こればかりは住んでみなければわかりません。
わたしの苦手な海なし国、海なし県(州)でもなく、このラインはクリア。
今の所、いろいろな意味で好みな街のようです。
にもかかわらず「アイデンティティ・クライシス」に直面している今日この頃。アイデンティティ・クライシス(identity crisis)とは、自己認識の崩壊や混乱のことを意味します。
自分の認識では「日本にいる日本人タイプ」のわたし。見た目とか、考え方、雰囲気、ざっくりそういうもの。「海外にいそうな日本人タイプ」や「日本人っぽくない日本人タイプ」「何人か判別つかないタイプ」などいろいろありますが、わたし自身としてはオーソドックスなタイプです。ちなみに夫はどちらかといえば何人だかよくわからないタイプ。
今日まで疑うことなくそう思ってきたのですが、ここにきて揺らぎはじめています。どうも上海のみなさんにわたしも中国人と思われているふしがあるのです。
まず、はじめて上海に到着した時のこと、パスポートコントロールに向かうと、入国管理局の職員に「中国人はこっちに並ぶ。そっちは外国人よ。わーわーわー」とわたしだけ中国人カウンターのレーンへと誘導されたのです。夫もいたのに。最近では、近所の大手英会話学校のキャッチ・セールスにもつかまってわーわーされています。
街角で、近所で、お店で、躊躇なく中国語で話しかけられます。話しかけられても答えることもできず「中国語わからないんです」と英語で答えると、みなさん、それはもう、本当にびっくりした顔をするのです。時には周りにいる人まで「うそぉ」みたいなリアクション。うそぉんてわたしが言いたい。そのびっくりリアクション、どうなんでしょう。わたしとしてはとても不本意なのですけど。
これが上海流コミュニケーションスタイルなのか、外国人全員が通る道なのか。きっとそうなのだと思いたい。今まで日本人以外に思われることはまずなかったのに。……のはずなのに。「あ〜ん?あなた外国人なの?」と無邪気に驚かれるたびに、困惑し動揺しています。
中国語が話せるようになれば解決できるようになるでしょうか。ワールドカップが終わったらがんばります。それまでは、ニーハオ(こんにちは)とツァイジェン(さようなら)だけでなんとか生きていこうと思います。