ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

きじ焼きを食す 埼玉屋/浅草橋

 

中華麺が手に入りにくい地域では、スパゲティ(できれば卵麺)の茹であがりに重曹を入れると中華麺っぽくなるのを利用して作るなんちゃってラーメン。その他、水気を絞った豆腐をつぶして、片栗粉で海苔をつけ甘辛く焼いて、うなぎの蒲焼風…などなど、無ければ作っちゃうぞ!というチャレンジ擬似料理。

 

今に始まったものではなく、室町から江戸時代にも、きじ(雉)が美味しいとされていて、きじの肉を味わってみたいというところから生まれた擬似料理のひとつが、とり肉や魚の切り身などを、しょうゆ、みりん、酒などで作ったつけ汁に漬けて焼いた「きじ焼き」なのだそうです。「きじ」と「ぎじ」って似てるね。

 

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浅草橋から蔵前方面に歩いて少しのところにある、下町で下町感をムンムンと醸し出している「埼玉屋」。お持ち帰り専門で、絶品のきじ焼きを食べさせてくれるそう。店前に止められたスーパーカブがお出迎え。

 

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焼き場。誰が主人なのかわからないのですが、全員主人だったとしてもおかしくない貫禄のベテラン感溢れる男女が働いていらっしゃいます。その内のひとりが、おもむろにガスを入れ、冷蔵庫から出してきた美味しそうなとり肉をバットにのせ、壺というか瓶(かめ)のような中からタレをすくい、一升瓶から直に酒を振る様子がワイルド。江戸っ子感あふれています。

 

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我が家の特上きじ丼と、特上きじ焼き(きじ丼のごはんなし)、そして焼き鳥が焼かれています。網に薄く切ったとり肉を素手で乗せていく様もワイルド。バットに残ったタレ汁をとり肉で拭き取ってバットを綺麗にする様もまたワイルド。

 

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お店の中に貼られている免許的な証書やポスターはもはや判読不明。きゃっきゃとはしゃぐわたしの存在などないかのように黙々ととり肉を焼くおじさん。彼もまたワイルドです。

 

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焼いている間にも近所に美味しい匂いが漂います。この美味しい香り、攻撃力高いです。赤いうちわがまたワイルド。そろそろかなという頃、おじさんに「焼き鳥どうする」とこれまたワイルドなダミ声で声をかけられました。怒っているかのような迫力のある声にビクっとしてしまいました。焼き鳥どうするとは…どういうチョイスを聞かれているの?と戸惑って(怯えて)いると、焼き鳥を別に包んだらいいのか、焼き物と一緒にしていいのか、という意味だったようです。言葉少なすぎ…やっぱりワイルド。

 

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いただきまーす。ぷりっぷりのとり肉が、悶絶しそうなほど美味しい。写真は特上きじ丼。きじ焼きの下には海苔が敷かれ、その下にごはんです。別タレと七味唐辛子もついてきました。ごはんに滲みたタレも美味しそう。

 

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焼き鳥も、きじ焼きだけも、もちろんぷりっぷり。しょうゆ、みりん、酒ベースの美味しくないわけがない我らがジャパンのゴールデン調味料。一般の家庭でもよく登場する味付けだと思うのですが、こんなに美味しく焼かれちゃったら、もうおうちで作れない!と嫉妬しちゃう美味しさです。

 

ごはんがないからもう丼ものは終わりなんて日もあるお店。ごはん好きの人も、ビールのお供に焼きだけ食べたい人にもぴったりの、ワイルドなおじさんによるワイルドなお店の繊細なきじ焼きでした。