引っ越してきてから荷物が届くまでの一ヶ月ほど期間、手荷物で持ってきたものと、アパートの部屋にもともと備え付けであるもので、とりあえずやり過ごしていました。とりたてて困ることはなく、あるものでなんとかなっているのでこのままでもいいんじゃないかと思っていました。
……と思っていたのは、気のせいでした。
荷物が届いて、いつものをものを使って見ると、やっぱりとりあえずのものと、いつものものは全然違いました。
まずは包丁。
久しぶりにいつもの包丁できゅうりを切った時には、自分はきゅうりを切るだけに生まれてきた、きゅうり切りマシーンになったかのような気持ちになりました。
特にいい包丁を使っているわけではないのですが、適当にでもたまに研いでいたりするだけで、こんなにも違うものなんですね。サクサクサク、トントントン、シャッシャッシャです。
そしてアイロン台。
こちらも久しぶりにいつものアイロン台でアイロンをかけた時には、自分がドライクリーニング屋の女将かと錯覚しました。
うちのアイロン台、がっちりしていてアイロンの面もバーンと広く、調節でかなり高い位置でアイロンすることもできるんです。スイスイスーイです。
アイロン台ひとつで、こんなにストレスなくアイロンがスイスイスーイなものとは正直思ってもいませんでした。ちょっと前まではアイロンかけがそこそこ面倒な位置付けだったのが嘘みたいです。わたしアイロンすごく好きかもしれません。
作業用のモニターも。
13インチのMacBook Airを使っているのですが、プライベートはともかく、作業用となるとやはり13インチでは作業効率が悪いのでもう少し大きなモニターに頼りたい。
モニターをセットし、MacBook Airと2枚の画面を並べた時の感動。これに関してはモニターが大きくなったところで「わたし天才かも」と錯覚するほどのことは起こりませんでしたが、凡人なりに大きな画面の方がミスも少なく、疲れも少なく、サっくらいの効果はありました。
この3つが、自分にとっては実はなんでもよくなかったんだなあと特に感じたものでした。世界が変わったといっても大げさではないかも。いや、大げさか。
もうひとつ、まったくなんでも良くなかったものがありました。
わさびなんて、といったらわさび会社のみなさんに申し訳ありませんが、正直好みの違いくらいしか違わないと思っていました。これをメインで食すわけでもなく、冷たいお蕎麦や、冷麦、素麺、おさしみなんかにちょこっとアクセントでいただくものと思っていたました。その考え、間違えていたみたいです。
今となっては、中国語が読めないのでこれがわさびなのかどうかも定かではないのですが、経験上、この形状でこの色と言えばわさびです。よね?(違うのかしら)
こちらを買って、ある日の夜ごはんにお蕎麦にした時に出したんです。わさびをちょちょっとつけてお蕎麦をすすった夫が、それはもうマンガの1コマのような感じで「ぶぶーっ」と吹いたんです。そして真っ赤になってゲホゲホとむせるんです。
あらあら、わさびが変なところにはいっちゃったのかしらと思いました。お水を渡し、落ち着いた様子を見届けたところで、わたしもわさびをちょちょっとつけて、お蕎麦をすすったんです。
もちろんマンガみたいになっちゃいました。それはもう。「ぶぶーっ」で真っ赤になって、激しくむせ返りました。
これ、ほんとにわさびなのかしら。尋常じゃない刺激なんですけど。わさびといえど、世界が変わるくらい違うものでした。
なんでもいいと思っていたものほど、意外となんでもいいわけではないのかもしれません。