ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

『GONE GIRL(ゴーン・ガール)』を観て思ったアメリカとアメリカ人

 

f:id:pucayu:20200118122846p:plain

映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

先日、夫が会食で遅くなるというので映画でも観ようとWOWOWシネマの番組表を見ると、デイビッド・フィンチャー監督特集ウィークでした。そこで2014年公開の『GONE GIRL(ゴーン・ガール)』を観ることに。

そうそう、これ観たかったんです。フィンチャーはマドンナの『VOGUE』のミュージック・ビデオがきっかけで見始め、後に『セブン』『ファイトクラブ』『ベンジャミン・バトン数奇な人生』のブラッド・ピット主演作多めなのでついつい観続けています。個人的にはショーン・ペンマイケル・ダグラスの『ゲーム』がふ好き。

観始めること10分。???

これ、もう観たやつでした。観たけど内容は覚えていないということはしばしばありますが、観たことすらもキレイさっぱり忘れているなんて……大丈夫かしら、この記憶力。

 

本作は、ものすごく乱暴に言えば、親子関係、夫婦関係、極端で過激なマスコミ、虚構と虚像の世界、殺人・誘拐・監禁、貧困と犯罪、死刑制度、ストーカー、不倫、反社会性パーソナリティー障害など、現代アメリカの病と闇と矛盾のオンパレードを、聡明で美しい妻の仮面をかぶった病的に粘着質で狂気的な悪意の塊の女と、知的でハンサム、セクシーな理想の夫の仮面をかぶった、底が浅くどうしようもないレベルでだらしのない夫、という夫婦を主人公に描いた、サイコ・サスペンス。

f:id:pucayu:20200118165119p:plain

夫ニックと妻エイミー

ちょっと話が逸れますが「アメリカ人の平均寿命が3年連続低下」という記事を昨年末に読みました。しかも、25歳〜64歳までのいわゆる「生産年齢」と呼ばれる働く世代のアメリカ人の死亡率が高くなっていることが要因といいます。

この映画のような出来事が全部まとめて起こるなんてことになったら、間違いなく寿命が縮みそう。

平均寿命の最高を、女性で6年連続、男性で7年連続更新している日本。勝手な所感ですが「自由の国アメリカ」の看板を背負っているけれど、楽なものではないんだなあと他人事ながら大変気の毒に思います。

www.businessinsider.com

www.businessinsider.jp(上:英語原文、下:日本語訳)

 

アメリカ・ナンバー・ワン!自由の国アメーリカ!とふつうの人たちが結構本気で思っているアメーリカ。

大学の4年間をアメリカで過ごしたのですが、自分の身の回り、学生の立場での限定的なアメリカはおおむね楽しく、良い出会いや経験ができました。

外国人留学生として生きるアメリカは、まさに自由の国で、ヤル気と運でなんとかなりそう!と思う一方で、この国でアメリカ人として生きるのはなかなか大変そうだなとか、アメリカ人じゃなくてよかったとも感じていました。

右手の「自由の国」的な立派な建前と、左手のダブルスタンダード。階級社会、人種の違い、宗教の違い、男らしさ、女らしさ、うんぬんうんぬんといった「自由のない国」な現実もあって、でもその両手の持ち主は同じ「アメリカ」、そんな矛盾にもやもやする国です。

個人主義とはいうものの、アメリカでいい感じに生きていこうと思うと、社会やコミュニティ、家族や親戚から、自分に求められる役割を全うする必要が出てきます。

ニューヨークなどの多民族エリアで大都会となれば違うのでしょうが、アメリカの多くを構成するその他の地域では、わたしの想像していた以上に型にはまっていたり、保守的、排他的なコミュニティな印象でした。

今だったらもう少し多面的に理解できるのかもしれませんが、大学生の頃は、こんな役割だらけのアメリカって意外に面倒臭そうと思っていました。

f:id:pucayu:20200118182855p:plain

 

そんなわけで、この『GONE GIRL』という病んだアメリカ社会と、病んだアメリカ人の映画を観て、寿命が3年連続で短くなっているのもしょうがないのかなと思い、心穏やかに生きていくにはアメリカってちょっとハードシップの高い国だわと思い、アメリカのダブルスタンダード的な正義感にうんざりした過去を思い出した次第です。

映画自体は、スリリングな展開と、後味の悪さというフィンチャー映画らしさ健在で面白かったです。

そういえば、ニックの双子の姉?妹?のマーゴとニックの関係が今ひとつよくわからなかったので、機会があればもう1回見てみようかな。

f:id:pucayu:20200118190736p:plain

ロザムンド、こわい。ベン・アフレックアメリカ人らしいうさんくささも見所です。