ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

大人になれば

今週のお題「大人になったなと感じるとき」

 

高校生の頃、アメリカにホームステイに行きました。書類選考が通り、選抜と振り分けを兼ねた試験と面接を受けることになりました。会場が東京で、三田とか田町とかその辺。ぼやっとしか覚えていませんが。

場所や集合時間など詳細が書かれた書類が家に届きましたが、そんなことより書類選考が通ったことで、まだ試験に通ったわけでもないのにすっかり舞い上がるあほな子、16歳。アメリカに行く気満々で、行ったら日本の高校の宿題やらはしなくていいんだーと(そう言われたわけではないのですが)勝手に浮かれていました。仙台在住、16歳。

「何時の新幹線にするの?」と母に聞かれ、

「何時でもいいよー」と答えたわたし。

ちょっとここに座りなさいと母に促され、母の向かいに座ると「これからしなければいけないことは、何時の新幹線に乗れば試験に間に合うのかを調べることと、新幹線のチケットを用意すること。東京駅から会場までどうやって行くのかを調べることでしょ?」と母。

ちょっと言ってることがわからないんですけど。

ちょっと前に16歳になったばかりのわたし、東京には行ったことはありますが、すべて家族と一緒か学校行事、ひとりだったとしても新幹線に乗るホームまで見送りにきてもらい、新幹線を降りればホームに誰かが迎えにきてくれていました。

「え、お父さんかお母さんも一緒に来るよね?」とあたりまえのように聞くわたし。

アメリカに行くって言ってる人が、東京にひとりで行けないってことないわよね」と母。

お、おぅ……

浮かれ気分が一気にしぼむ。「え、でもひとりで東京行った時ないんだけど……」もにょもにょ言うと「じゃあアメリカもなしよね。お父さんもお母さんも一緒に行かないから。そもそも東京にひとりで行けないなら試験も受けられないしね」

ひっ……おそるべし正論。情け容赦なんて言葉はわたしの辞書にありませんと言わんばかりの母の顔。交渉の余地はなさそうです。アメリカに行くためにはひとりで東京に行くしかないのかしら。

そんなことあたりまえなのかもしれませんが、その時までは自分でやるなんて考えたこともなかったので、正直ビックリ。誰かがやってくれることがあたりまえの世界から、自分でやる方の道にドンと突き出された時でした。

えーわたしがやるの?ひとりで行くの?ほんとに?えー?と大騒ぎつつ、教えてもらったとおりに準備した懐かしい記憶。新幹線を降りてからどうやって乗り換えていったらいいかなどを書いた長いメモと、万が一の時の電話番号とテレフォンカードを持たされ(テレフォンカード!)、びくびくしながらひとりで東京へ向かう16歳。

やってみたらできるもので、東京に行って帰ってきて、アメリカにも行って帰ってきて、その時に知り合った友だちと遊ぶためにひとりでふつうに東京に行く16歳ができあがりました。

その後もまだまだ経済的、精神的にこども時代が続くのですが、あの辺りが大人への一歩だったように思います。自発的にというよりは、親ライオンに崖から突き落とされた子ライオンの感がなくもありませんが。東京にひとりで行くなんてと大騒ぎしていたわたしに教えてあげたい、あなた大人になったら八丈島も、イースター島も、キュラソーにだってひとりで行くからそのくらいで大騒ぎしないでいいよと。

 

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今週のお題「大人になったなと感じるとき」