ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

苦手な3月をやり過ごす

 

100年以上前から知られている顕著な傾向として、ヨーロッパやアメリカにおいては、3月は自殺者の多い月として知られています。この傾向は日本でも同様のようです。

当然ながら、それに対してさまざまな原因究明のための研究がなされ、さまざまな論文が発表され、現在ではさまざまな対策が取られています。

このことを初めて知ったのはジュニアの時に大学でとった認知心理学(Cognitive Psychology)の授業でした。通っていた大学の、3階にある教室でその部分を話しているその日の授業の雰囲気は、映像として今も覚えています。

この傾向については、春の自律神経の乱れやすい時期と重なって身体的、メンタル的な不調が多というもののほか、冬が終わりガラッと気候が変わるこの春というタイミングと、一般的な理由にあげられる健康不安、経済的な不安、将来への不安、人間関係などいろいろな要因とのコンビネーションが挙げられます。

その認知心理学のクラスでは、「認知」という側面から、季節的な要因などもありうつの症状が一番強く出ると言われている冬季ではなく、なぜ3月になって自死が増えるのかを、メンタルの年間のバイオリズムを線グラフで表しながら説明していました。

気持ちの面で底にいるのは確かに冬季です。衝動的な行動に出る人もいなくはないけれど、一般的には気持ちが底すぎると何か行動に出ることはできない、もしくは、行動しようという意思を持つことや、どうやって行動するかなどを考えることすらできない方が多いのだそうです。

一方、一番の底の部分を抜けて上がり始める3月(または4月や5月)になると、気持ちが徐々に上向いてきたことで、思考力が戻り、決断力が戻ってくるのだそうです。ただし、上を向き始めただけで、まだその人の安定したポイントまでは上がりきっていないため、何も見えない底にいた時よりもまわりが見えるようになったものの、見えたまわりはまだまだ暗かったという状況で、そこに絶望し行動に移すことがあるという話でした。

上向きになってきたからこその不幸・・・ではなく、もしもまわりに少しでも助けが必要な人がいたら、一見どん底に見えるようでも、それは上を向き始めたサインだから心配せずにその人の手を握っていてあげなさい、授業ではそう言われました。

いくら「上向きになっている証拠だよ」と当事者に向かって言ったところで、その人はその言葉が届くほどはまだ上には来ていないので、辛い、しんどいという人がそばにいたら、あわてなくていいのでただその手を握っていてあげなさい。今のこの辛さは上に向き始めたサインだと知っているだけで、あなたの気持ちは少しは違いませんかと話した先生の様子とクラスの雰囲気は、今でも思い出す光景のひとつです。

過去にも何度かブログで触れているのですが、わたしは3月が苦手です。深刻なものではまったくありませんが、一番嫌いな寒い冬は過ぎたものの、やや低調がだらだらと続く3月が苦手なのです。

気候だけではなく環境の変化の多い時期でもありますし、4月から年度が変わる日本としては、変化直前の気ぜわしさもあります。花粉症で目や鼻、肌にも不快感があり、くしゃみやハナミズで睡眠が妨げられることも少なくありません。薬を飲めば多少の症状は抑えられますが、薬を飲まなければいけないこと自体もじわじわ効いてくるタイプのストレスです。

そんなわけで、3月はしょっちゅう「ほんと3月っていやだわ」とぶちぶち言っているのですが、毎年この授業のことを思い出し、ここが過ぎればもう少しましな景色になるはずだと、あまり気持ちをアップダウンさせないようにしながら3月が過ぎるのを待っています。

3月、あと半分!

 

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ペルーのオリャンタイタンボ(2013年3月)