ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

新レーベル「おいしい小説文庫」の創刊ラインナップ|『氷と蜜』佐久そるん

 

<かき氷 小説>で検索した時に、一番最初にあがってきたのが、佐久そるんの『氷と蜜』でした。2020年6月に小学館文庫から「おいしい小説文庫」という新レーベルが登場。その創刊ラインナップ3冊のうちの1つが今回読んだ『氷の蜜』なのだそう。2019年開催の「第1回日本おいしい小説大賞」で、惜しくも大賞は逃したものの最終候補に残った作品とのことです。

作者自身、パンケーキ、パフェときて、執筆されていた数年はかき氷にはまりっていたとのこと。ひとつのものをついつい追いかけてしまう気持ち、すごくわかります。シンパシーを感じます。こうやって本を書くほど突き詰めるところがプロですね。すごい。ちなみに昨年のコロナ禍での自粛期間中にはお取り寄せお菓子をされていたとのことです。今度はお取り寄せスイーツ小説を書くのかしら。

本はやっぱり紙の本という気持ちはもちろんあるものの、この本はキンドルじゃなかった買わなかったかもしれません。かき氷の小説が他にないこともあり、まあキンドルだしと購入しましたが、本屋さんの棚においてあったらぴんとこなかったかなー。

前回までの2冊のかき氷小説が、メタファー的なかき氷だったとすると、この本はそのまんまかき氷についてのお話でした。

氷を愛でる神様を祀る、奈良市春日野町の「氷室神社」で行われるかき氷のお祭り「ひむろしらゆき祭」という実在するお祭(作品の中では「ひむろかざはな祭」)がベースになっており、物語はお祭りで開催されるコンテスト、コンテストに参加するゴーラーと称するかき氷の愛好家たち、そしてかき氷そのものがテーマになっています。

実際氷屋さんに行くと氷室神社のお札や御朱印が飾られているのを見かけることもあるので、この物語自体はフィクションではあると思うのですが、こういったことはあるのだろうなあと思いながらふんふんと読んでいきました。

かき氷ってそんなにしないとダメ?と引くくらい本気度の高いゴーラーたちにおののきます。わたしの好きレベルとはちょっと違う次元まで掘り下げられた、本気のかき氷好きたちのお話はとても勉強になりました。

世の中にはすごいかき氷がいろいろあって、つぎつぎとすごいかき氷を見つけてくる人もいて、フットワーク軽くどんどん出かけて、ざくざくかき氷を食べる人がけっこうな数いますものね。質も量も、かなりのプロクオリティーのかき氷アカウントを作っている方々がいらっしゃっていつも楽しく読んでいます。

(余談ですが、最近はクリームソーダがぐいぐい食い込んできているのを、SNS上はもちろん、街を歩いていてもヒシヒシと感じます)

小説の中でも登場人物たちがつぎつぎといろいろなかき氷を食べにでかけていくのですが、わたしもかき氷食べに行きたくなりました。

……と書きながら、今食べているのは姉がおみやげにくれたガリガリ君のうめ味(40周年記念商品)です。

 

 

本家ひむろしらゆき祭公式サイトに並ぶ、関西を中心に全国から集まるかき氷たちの写真は圧巻です。

公式サイト:ひむろしらゆき祭