ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

はじめてのカセロラッソ

 

都市封鎖がはじまり、・・・1ヶ月。おおおおおお。「そろそろほんとに、XXXXXXXXー!!」という市民のカセロラッソ(caserolazo)の様子がちらちらっとSNSに流れるようになった今週の上海。

カセロラッソとは、南米で多い鍋などを叩いて抗議の声を上げるプロテストの1つです。英語だとPot-banging protestsなどと言われますが、なんにせよ鍋を叩いて庶民の声を政府に届けるというアクション。

2012年のブエノスアイレスのカセロラッソ呼びかけ
ツイッター拡散用のイメージ

わたしのはじめてのカセロラッソとの遭遇は、ブエノスアイレス(アルゼンチン)に引っ越しまだ日の浅い、カセロラッソの「カ」の字も知らない頃のこと。

夜の8時とか9時頃、ひとりで部屋にいると突然、無数の「カンカンカンカンカン!!!!」とに何か金属を叩くような音が一斉に外から聞こえてきたのです。

カンカンカンカン!!!!

なになになにーーーーーーー?鳴り止まない。カンカンカンカン!!!!ってなんなのー、怖いんですけどー。あんまり怖すぎて隣のお宅をノックしてみたのですがおばあちゃん出てこない。おばあちゃん、ノックの音聞こえていないのかも。カンカンカンカン!!!!こわいー!

どうしたらよいのかわからず、ひとまずエレベーターに乗ってロビーに降りました。エレベーターの中まで聞こえてくる、カンカンカンカン!!!!やばいんじゃない?なにこれ?

ロビーに降りると、のんびりとカウンターの奥に座ってスマホでサッカー中継を見ているセキュリティのおじさん。カンカンカンカン!!!

やばい、このカンカンカンってもしかしたらわたしにしか聞こえていないのかしら。(と思ったこの瞬間が一番恐怖だった)いやいや、そんなはずありません。すごい聞こえてるし!

そんなわたしに「オラ、セニョ〜ラ」とのんきに声をかけるセキュリティ。わたしからしたら「オラセニョ〜ラなんてのんきかー!」と怒鳴りたい感じですが、のんきなセキュリティにはこの外から鳴り響く金属音より、今日のサッカーの試合の方が大事っぽい。

「こここここ、このカンカンカンカンはなんなんですかー?!」と必死に訴えるわたし。「は〜?ほにゃららら〜ノパッサナ〜ダ、ほにゃららカセロラッソららららら〜」とのんきな声でわたしをあしらうセキュリティ。意識はほぼほぼ試合中継。

「大丈夫、大丈夫、なんでもない、なんでもない、ほにゃららら〜、ほにゃららら〜」とエレベーターまで見送られてしまいました。(なんでもなくないんですけどー)と頭の中は大混乱のまま部屋のある階に到着。

結局「ノパッサナ〜ダ(No pasa nada)なんでもないよ、大丈夫ー」と「カセロラッソ(caserolazo)」しかわからなかった。

部屋に戻ってもまだ聞こえるカンカンカン。セキュリティの言っていた言葉をカタカナからなんとか検索してたどり着いたのが、この鍋を叩く市民のデモ「カセロラッソ」だったのです。(その後何度もあったので、この時のカセロラッソが何に対しての抗議かは覚えていませんが・・)

ちなみに中国語でもこの鍋叩きによる抗議活動のことを「敲锅(チャオグ)」「敲锅打铁(チャオグォダーティエ)」となるようです。そのまんま。

SNSで見る限り、カセロラッソはアパートや数棟のマンションなどごくごく小規模なものですが、政治的発言の自由のある国でならともかく、その手の自由がほとんどないこの国でカセロラッソとは・・・と、ちょっとぷるるっと震えました。