ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

コロッケも猫もいない、じゃない方の谷中さんぽ

令和の時代も平成の時代も、行けばだいたいたい昭和にタイムスリップできる街、台東区谷中。でもこの日は、外国人がコロッケを食べながら猫を追いかける、インバウンドの荒波に揉まれている谷中ではなく、じゃない方の谷中を少し歩いてみた。

東京のど真ん中とは思えない、この空の広さ。まるでどこかの田舎に来たような光景だけれど、多くの小さなお寺とお墓がつくるこの空間は、よほどのことがない限り(地面師に騙されるとか)、再開発とは無縁だろうな。

夏の夜にここで怪談でも聞いたらゾクゾクが止まらなくなりそうな、足元から這い上がってくる昭和建築のツタ物件(左上)。白シャツに短パン姿で自転車で爆走するおじちゃんと、下から順に咲き、てっぺんが咲くと梅雨が明けると言われるタチアオイ(左下)が咲く角。

川端康成がかつて近所に住んでいた谷中のシンボル、ヒマラヤ杉とミカドパン(右)。開けた空がそこだけ森の一角のように、三叉路を塞ぐように立っていた大きなヒマラヤ杉は、わたしが東京にいない間に台風の直撃を受け、今やスッキリ、ほっそりと剪定されてしまっていた。ミカドパンもコロナ禍のあいだに閉店してしまったらしい。

たまにはスマホの地図アプリを開かずに歩くのもいいものだ。

おなかがすいたので、帰りしな、久しぶりにカヤバ珈琲でたまごサンドでも食べようかな。谷中の入り口の角に立つ、1916年築の木造2階建ての町家。1938年からカヤバ珈琲として営業している。

看板メニューは、暖かい卵焼きを挟んだたまごサンド。でもメニューを眺めていたらやっぱりかき氷に惹かれてしまった。外も暑かったし、なによりカヤバ珈琲オリジナルの「谷中ジンジャー」シロップをたっぷり使ったかき氷を食べないわけにはいかなくなる。

柔らかく削られたひんやりとした氷に、ピリっと効いたジンジャー。じっとりした暑さにやられていた体が生き返る。

最初はAudibleで本を聴いていたのだけれど、隣にいた二人組の、とても穏やかなのに毒とユーモアたっぷりの会話の方が面白くて、途中からはすっかりポッドキャストを聴いている気分。……収録、してないよね?と思いつつ、しばらく耳を傾けてしまった。