ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

『女は後半からがおもしろい』のか?と思いながら読む

 

『女性の品格』の著者で元官僚、坂東眞理子と『おひとりさまの老後』の著者で学者の上野千鶴子、この二人による対談本、『女は後半からがおもしろい』を読みました。2011年に単行本、2014年に文庫本が発行されてますので、10年ほど前の対談でしょうか。東大の入学式のスピーチ(上野)が話題になったのって今年?去年だった?1年って早い。

子どもの頃から頭も良く(学校でトップとかのレベルではなく、県でトップとかのレベル)、ご本人自身も努力家、上野さんは京都大学へ、坂東さんは東京大学へご進学。社会に出ても(上野さんは学者、坂東さんは官僚の道へと進まれます)ご本人の優秀さ+勤勉さを持って活躍され、全く違う分野ではありますが、それぞれの分野でのパイオニアとして道を切り開いて……という、ちょっとやそっとの優秀さでは語れないお二人。

現在は70代前半のお二人が60代になられたころの対談本です。

 

わりとシニカルなトーンで(おそらく本人たちはそんなつもりは全くなく)お互いの半生から、女性の社会環境について、現代の女性たち、後半の人生についてなどをしゃべりたおします。

対談というよりは、主張A→主張B→主張C……と個人の思い丈を述べていくスタイルで、互いの意見はとくに交わることなく、次々と個別に展開していく様子が印象的でした。そんな二人が唯一(?)会話になっていたのが、勝間和代の話題(悪口か?)になったところ。ふふ

トップ数パーセントで生きてきたようなお二人が、トップの世界から見た世間一般の話は、正直なところ共感できるようなポイントはまったく見出せませんでした。

 

がしかし、この本の面白ポイントはそのあたり。

このお二人、他人の目(意見)どころか、対談相手のお互いのことを気にする風でもなく、えーそんなこと言っていいの?(というか活字にしていいの?)というようなドキドキ、時にイライラ、時にムカムカするようなことを好き放題話しているところが面白かった。

わたしの世代(40代)やその前後の世代の人の話は、共感できるゾーンを広めにとって語られることが多く、そのゾーンが広ければ広いほど、反感を買う可能性は確かに低いものの、ぐっと刺さる可能性も低く......。

平たく言えば反感すら買わない、なんとも思わない、どうでもいい……ん、なんの話でしたっけ?という内容のものが多い気がしていた今日この頃。こぎれいにまとまってはいるのですが、特に残らないものが多いように思います。

「そんなことを言うのは正しいことではありません」という、ポリティカリーコレクトネスなのか、同調圧力なのか、リテラシー的なものなのか、そういういろいろな見えない何かがあるのでしょうか。

いずれにしても、極に寄った話をはあっという間に火まみれになるので、聞く機会が減ったのかもしれません。

印刷される活字という媒体の中で、お二人が言いたい放題ということ自体に、おばちゃんらすごいわ……と話の内容には若干引きつつも、おばちゃんすごいわ(2回言った)という感想を持ちました。

そんな、人生の後半に差し掛かった女性お二人自身が、他人の共感を一切気にせず勝手に話しているところが実はいちばんおもしろかったという本でした。

 

……こんなに自由に話せるのは、これが10年前だからなのでしょうか。この二人を持ってしても、今日こんな感じで話すとアウトになるのか。

まともな話も、ユーモアも、姿の見えない人々からの集中砲火にやられたらひとたまりもない昨今。なんだかなあと思わなくもありませんが、今後もこの風潮は変わらないと思いますし、もうそういう世の中です。

内容があって、問いかける力のある方々には、火ダルマになるお覚悟を決めていただき、 尚一層の発言を期待します。

姿の見えないわたしたちがわーわー言う、結構なことじゃないでしょうか。わーわー言っちゃダメというのもおかしなことですし、わーわー言われるのを気にし、わーわー言われない程度にしかものを言えないというのも悲しい。

わーわー言わせてよ!わーわー言ってくれ!……あらら、なんだか話が違う方向に。読んだときに感想を書こうと思っていたのですが数ヶ月放置してしまい、いざブログに書いてみたら本の中で語られていた内容への感想を書くスペースがなくなってしましました。それはまたいつか……(書くのか?)

 

女は後半からがおもしろい (集英社文庫)

女は後半からがおもしろい (集英社文庫)