ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

キミは知らんと思うがね|パッキパキ北京

発売日が12月5日だったので、きっと一定数の中国在住邦人もこの週末に読んだと思うんだけど、わたしも読んだ。綿谷りさの「パッキパキ北京」。

わたしはKindleなので白黒ですが、単行本のカバーはEテレの今年版の「テレビ中国語!ナビ」のセットみたいな、ブラック&ネオンな感じ。

芥川賞を取った「蹴りたい背中」しか読んだことがなかったのですが・・あれがもう20年前なんだ。受賞作を書いた時、作者はまだ19歳で、当時「サイネンショウ・アクタガワショウ・ジュショウ(最年少芥川賞受賞)」と何度もメディアが言っていたのを覚えている。

そういう言われ方に本人はうんざりしていたんじゃないかと思うけど(知らないけど)、20年経った今も書き続けていることで「19歳」に大騒ぎしていた人たちよ見たかフフン、思っているかもしれない。わたしもどちらかというと「おお19歳」と思って本を手に取った側なので、これを機にちがう本も読もうと思う。

小説は、ゼロコロナ政策後半から今年の春節(2022年秋〜2023年春)までの北京が舞台。主人公は菖蒲(あやめ)という、単身赴任の夫の元に愛犬と共に中国の首都北京にやってきた36歳か37歳のの女性。この人がすごいパワフルで、たぶん声も大きいと思う。30代後半の、若い頃とはまた違う怖いもの知らずというか、面の皮の厚さというか、なんというかコミュニケーション能力がすごい。

個人的な感想だけど「北京」を擬人化した人物像・・といった感じ。人口14億のトップの街なので、北京ってけっこうカオス、菖蒲さんもカオス。シャネルのバックを旦那さんに買ってもらいながら、ローカルなエリアのローカルなお店でロバの肉の火鍋やクセのすごい(というか匂いがすごい)タニシの麺とか食べるし、ランゲージ・エクスチェンジで仲良くしていた院生カップルの男の子の方に手を出したりもする。

菖蒲さん自体が中央値のような人物ではないので(旦那さんは中央値の範囲内の人)、わたし個人の体験と重ね合わせてわかるわーという話ではなかったけれど、たしかにあの半年くらいの期間の中国(北京)がギュギュギュがつまっているお話だったので、10年くらい経って読み返したら、いわゆる風俗小説として当時の社会観とか世相とか、ああこんなんだったなあと思い出すのかな。中国は回転が早いから、来年にはもう相当懐かしく思うかも。

そんなカオスな本だった。でも中国がカオスみたいなところだから、そういう意味でパッキパキなんだと思う。

ちなみにパッキパキというのは、主人公が、北京を流れる亮馬河という川が凍ったところを見ていた時に頭の中に流れてきたラップ。

キミは知らんと思うがね

冬の北京はパッキパキ

(ヘイのんしゃらりー のんしゃらりー)

まったくイメージできないけど、もし映画化かドラマ化したら、このへんてこなバースがどんなラップになるのかすごく気になる。

誰か次は「上海なんとか」みたいな小説書いてくれないかな。

 

YouTubuで告知も(著者出演)

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ずいぶん前に「上海ベイビー」という小説があったなと思ってAmazonを見てみたら「過激な性描写でたちまち発禁処分を受けた中国の大ベストセラー」と商品説明にあった。おおお。映画化もされていて松田聖子が出演しているみたい。こっちもカオス。