寒かったからか、風が強くて花粉が飛んでいたからか、ただ外に出るのが億劫だったのか覚えていませんが、その日わたしは家にこもり、夫はひとりで出かけていきました。用事があって中野に行ったので、きっとお土産はあれかなあと楽しみにしながら、家で夫の帰りを待っていました。
わたしが待っていたのは、中野に行ったらよく買ってくる、美味しいチーズケーキ屋さんの、美味しいチーズケーキです。
もみじ山通りという、可愛らしい名前の通りにある、チーズケーキの専門店。住宅街にあるお持ち帰りのみの、知らないと通りすぎてしまうほど小さなお店。いろんな種類のチーズケーキがあります。
クリスマスにお店に行った時には、クリスマスケーキ風チーズケーキも用意されていました。
この日も、私たちの前にも後にも、お客さんが途切れることなくチーズケーキを買いに来ていました。行列ができるわけでもなく、と言って人の流れが切れない、そんなお店ってステキです。
夕方に行ったら、もう最後のチーズケーキだったこともありました。ふたり家族なのにチーズケーキ3つ。
この日も、いつもの箱をぶら下げて帰って来るんじゃないかなーと、買ってきてねと頼んだわけではないのですが、チーズケーキを食べる気満々。
お店の名前は「Shun(シュン)」といいます。
この日、帰って来た夫の手にケーキの箱はありませんでした。お店は閉まっていたよ、と残念そうに言いました。3月19日で、40年続いたチーズケーキ屋さん「Shun」を閉めることにしたそうです。
もうあの美味しいチーズケーキを食べることができないと思うと、とっても寂しい。つい通いたくなる美味しいチーズケーキでしたので。
でも、チーズケーキ職人であるオーナーは(おそらく「シュンさん」ですよね)きっとやりきった思いでお店を閉められたのではないかと想像しています。なんたって40年。美味しいチーズケーキを作り続けること、それを生業として、お店を続け、家族を養い、来るお客さんに愛される、そんな40年を送れるってすごいことだよね、夫と引退を決めたケーキ職人のことを想いました。
諦めの悪いわたしは、しばらく休んで、休むのに飽きた頃、不定期営業で復活しないかしらと淡い期待を抱かずにはいられませんが……もう一度、全種類二口ずつくらいでもいいので食べたかったなあ。
冗談です。わたしも美味しいチーズケーキと、ステキなチーズケーキ屋さんに出会えて大満足です。
さようなら、ごちそうさまでした。