鴨川で1杯……と思っていたカフェが今はないと知り、行き場を失ったわたし。他に行きたいところも思いつかず、食べたいものも思いつかない。せっかく京都にいるのに、そしていつまた来るかもわからないのにコンビニやマックというのもなんだかな。
京都の食を偏愛する友人がひとりいるのですが、その彼女に京都で食べたいものない時におすすめの場所はあるかと聞き、しばらく待つと「やっこのキーシマ、とりあえず」との返信が。
やっこのキーシマ......
はて。やっこ?キーシマ??謎のワードがわたしのハートを鷲掴み。全く聞いたことのない音にいろいろと想像をめぐらします。はー、全然わからない!やっこのキーシマってなんでしょう。
なんにせよ、何度も来ている京都ですが初めて聞く名前、やっこのキーシマ。早速インスタでキーシマ検索。ほうほう、これがキーシマ。ツイッターでもキーシマ検索。ほうほうほう、これですかキーシマ。
個々の情報が集まって少しずつ全貌が見えてきました。目指すやっこのキーシマは丸太町の周辺のようです。
同じ下町でも京都の下町と東京の下町では、建物や街の佇まいにも全然違う空気が漂っています。ゆったりしつつもキリリとした京都の街を歩き、お目当の「やっこ」にやってまいりました。
やっこは昭和5年(1930)創業とのこと。ちなみに京都創業の百貨店、高島屋は天保2年(1831)の創業だそうです。京都で「老舗」を名乗るには、最低100年からとのこと(ほんと?)ですので、やっこさんはもう一歩というところでしょうか。京都ハードル高し。
こちらのやっこは、そばもうどんも丼物も、ラーメンだってカレーライスだってやるよという、昔からある街のそば屋です。
地元のお客さんがいつもの食事用に使っている大衆食堂のようなおそば屋さん、各メディアでもよく取り上げられるようになり、わたしのようなキーシマ目当の他所の人間もちょいちょい現れるそうです。で、キーシマってなに?
まだ夜のお客さんが来始める前の時間、客はわたしだけ。ワクワクして待つわたしの目の前に現れるキーシマ。
これがキーシマ。もとはまかないメニューだったそうです。「キー」は黄色い中華麺、かけうどん、かけそばでいただくことを「シマ」と表すお店独自の用語で、キーのシマでキーシマ、細麺の中華麺をうどん出汁でいただく麺メニュー、それがキーシマ。これ以上ないところまでシンプルでミニマルな一杯。
「七味か山椒でどうぞ」と女将がキーシマとネギをとんと置きました。柔らかい麺、すっきりとした甘めのうどん出汁。この写真とこの文字を見て思い浮かべるであろう味そのままだと思います。一口ずついただいてから、ネギを載せました。七味での味は想像できたので、今回は山椒でいただきましょう。
これがキーシマかという思いを反芻しながらあっという間にとぅるんと完食。大変美味しくいただきました。
この「キー」シリーズはいろいろあるそうで、きつねうどんのうどんをキー(中華麺)にすると「キーきつね」、カレーうどんのうどんをキーにしたら「キーカレー」なのだそうです。ありとあらゆる「キー」を食べ尽くした方のブログなどもありました。
謎メニュー、キーシマ。楽しくいただいてきました。
京都に来て、何を食べたらいいか迷子になった時には、また来ようと思います。