高校生の頃に何冊か読んだことがある佐藤泰志、ここ10年ほどで映画化されていたのは知っていて、なんとなく気になっていました。函館出身の佐藤泰志原作、オール函館ロケの「函館三部作」と呼ばれる3本を観ました。
三部作だと思っていたら、知らないうちに4作目も映画も公開になっていましたが(『きみの鳥はうたえる』2018年)こちらはまだ未視聴なので、近々見たいです。
映画のタイトル文字や、エンドロールの原作者名の箇所など、この文字が使われていました。特徴があり、なにか引っかかりのある文字で、検索してみたら佐藤泰志の直筆文字でした。この字で原稿用紙が埋まっている小説なんだと思うと不思議な感じがします。映画を作った人たちが、あえてこの文字を映画に使用したのも納得な、ざらっとしたと言いますか、ちょっと呪われそうなと言いますか、何か残るタイプの文字です。
正直なところ、彼の小説を読んだのがあまりにも前のことなので、話も登場人物も全部ごちゃっとなっていてちゃんと覚えていないのですが、読むのがただただしんどかった記憶があります。読んだのは二、三冊だったと思うのですがそのどれもがそういう感じ。登場人物たちの生まれや育ち、今の生活環境、その他いろいろなものが苦しいし、逃げ場もないし、どこにもいけない、やりきれない・・そんな印象だけが残っていました。
読んだ当時、能天気な高校生だったのでそう感じたのかもしれませんし、作家本人が41歳という若さで自ら死を選んだということも、余計にそう思い込んだ理由のひとつだったかもしれません。
そして今回は映画です。見る前から、三作とも手応えのある映画になっているんだろうなと期待させる俳優の名前が並んでいます。
ものっすごく重くて暗いのに仕上がっているのを想像して、かなり覚悟をして見ました。その甲斐(?)もあってか思っていたほどの苦しさは感じず観ることができました。『そこのみにて光輝く』はそれでもしんどかったですけど。それでも映画全体としては3作どれも、監督の作品への想いなのか、原作の物語に対する想いなのか、作家へのリスペクトなのか、もしくは観る人のためなのか、映画を見終わった後も、登場人物たちの生活は淡々と続いていくんだろうという感じがあったのが救いでした。
救いというほど救われているわけではないのですが、それでも閉塞感のまま苦しんで消えていく的な終わり方ではなかったような。本当は小説のほうもそうだったのかもしれないのですが、なんせすごく重い話だった記憶しかなかったもので……。
そんなわけで、映画の中のストーリーでも重さや痛々しさはあるのですが、映画になったことであの小説たちに対してわたしが思っていた重さや痛々しさの部分は、何か一段別のもに昇華されたような気に今はなっています。
もう少し日をあけてもう1度見ようかな。そして原作も読んでみようかな。いや、あまり深追いせずにこのあたりにしておいた方がよさそうかな……
監督:熊切和嘉 脚本:宇治田隆史 出演:谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫
監督:呉美保 脚本:高田亮 出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋一也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村奏二郎
監督:山下敦啓 脚本:高田亮 出演:オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、松澤匠、鈴木常吉、優香
オーバー・フェンス - Wikipedia(公式サイトリンク切れ)
上のリンクは映画の公開順に並べましたが、わたしは新しい順に見ました。特に意味はないのですが。
お題「#おうち時間」