ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

『蜜蜂と遠雷』を読んで、観る

 

お名前はもちろん存じ上げておりましたが、なかなか読む機会のなかった恩田陸。公式プロフィールを見ると「宮城県仙台市出身」とされていて(東日本を中心に全国いろいろな所に住まわれているようです)一気に関心が高まっています。

今回読んだのは、2016年刊行の長編小説で(連載は2009年から2016年、長い!)2017年の直木賞本屋大賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』です。

3年ごとに開催される世界的な注目度の高い国際ピアノコンクールの話で、4人の若い天才ピアニストを中心に描かれています。ブログを書き始める前に、感想やコメントをちらっと見ると「一気に読んだ!」というものが結構目につきました。残念なことにわたしは一気に読む時間がなかったので、小説に描かれているコンクールの期間くらい(約3週間)かかって細切れに読みました。

小説は、コンクール予選にエントリーする出場者を選ぶオーディションから始まり、一次予選、二次予選、三次予選、そして本選と進んでいきます。馴染みのある曲や、小説で初めて知った曲も登場し、YouTubeで実際に演奏されている動画を見ながら読み、そいういう意味でも楽しんで読みました。

本選まで残ったコンテスタントは、コンクールを通して平均13曲ほどの楽曲を演奏することになるのですが、文庫本全1000ページくらいあるうちのほとんどがその演奏の描写なのに驚きました。文字だけで延々とピアノ曲の描写をする、そんなことってできるのかしら。全曲描写されないまでも、かなりのボリュームです。メインで描かれている人だけでも4人もいます。執筆に7年を費やしたというのもまあ納得。

その演奏の描写そのものがまた圧巻で、多くの人が一気に読んだとのコメントするのも合点がいくその叙述、読んでいることを忘れて読みました。生の演奏を一緒のステージに登って真横で見たとしても、わたしだったら「すごい、超絶うまい」くらいしか言葉が出てこない思うのですが、それが文字になっている感動と興奮。最後まで演奏にワクワクし、審査結果にドキドキしながら読ませられてしまいました。

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 文庫
 

そして、本を読み終えた翌日(今日のことですが)、時間が取れたので映画の『蜜蜂と遠雷』も観てしまいました。

本や映画の感想ってあまりブログに書くことはなく、書いたとしても少し間を置いてから書くことの方が多いのですが(ブログに書こうと思っていても、間を置いているうちに感想も忘れ、書くタイミングを逃す)、原作を読み終えた直後に映像を観た機会も今まであまりなかったので、せっかくならブログも書いておこうと思った次第です。

何と言ってもピアノのコンクールなので、普通に考えたら、音楽を直接使える映画という表現手法の方がアドバンテージがあるかと思って観たのですが、小説の演奏部分が映像や音に負けないインパクトがありましたし、映画の演奏も、演奏する演技をする役者たちもすばらしかったので、どちらもそれはそれとして楽しめました。

小説を読んでいる時に、ここはどういう風に描かれるんだろうと想像していた部分を、実際に映像で観て鳴っている音が聴けるというのはなかなか面白いものでした。

ただ、映画は映画と頭で理解して観ているつもりでも、小説との違いが気にならないと言ったらやはり嘘になり、こんな見方はナンセンスと思いつつ、間違い探しのようになってしまうこともしばしば。映画はもう少し後で見たらよかったなあというのが正直な感想です。

特に、映画では本選の演奏曲が入れ替わっていた箇所があり(映画的演出か)、そこが気になりすぎてクライマックスに向けて気持ちが入り込めず残念。また忘れた頃に観ようと思います。

他の方の映画の感想も見てみよう。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

  • 発売日: 2020/03/08
  • メディア: Prime Video
 

作品には関係ありませんが、小説は文字情報を自分の頭で処理しながら話を読み進めていきますが、映画は画、文字、音、など情報量も多く、処理しなくともどんどんと話が先に進んでいくので、意外とわかってないまま話が終わっているようです、わたし。

1回観ただけで理解できる処理能力の高い脳みそが欲しいです。