先日本屋さんに行った時、こんな本をみかけたんです。
『家事』というタイトル。カバーにはオイオイと泣きむせぶ女性。泣くほどの《家事》って何なんでしょうね。
わたしも《家事》は好きじゃない・・好き嫌い以前に・・なんと表現したらよいでしょう。丁寧な暮らしをしている本や雑誌を見ると素敵だな、いいなと思うけれど、じゃあわたしもやってみようとかはまったく思わない分野です。
とはいえ生きていくために最低限の家事は必要なので、特に興味があるわけでも、好きでも、嫌いでもなく、日々たんたんとこなしたり、こなさなかったりしているのが、わたしにとっての《家事》です。
ステキな丁寧な暮らしとは程遠いですが、病気にならない程度に掃除をし、病気にならない程度に洗濯をし、病気にならない程度に食事をつくる。ひとりだったら、ほんとうに最小限の《家事》しかしないだろうな。
そんなわけで、暗闇でオイオイするくらいなら、自分の心の健康のためにも家事なんてやめてしまえばいいのに・・と思うのですが、そんなわけにはいかない事情の方々もきっと世の中にはたくさいるでしょうから、こんな立派な装丁のハードカバーが本屋に並ぶんですよね。
帯にも「这是家事!(これが《家事》だ!)别声张!(他人は口を出すな!)」と書かれています。そうですよね、泣くくらいなら・・なんて他人だから言えるんですよね。
それにしても、泣くほどの《家事》にはめっちゃ興味があります。
本を開いてみる・・も、炊事、洗濯、お掃除、一向に出て来ない。いわゆる《家事》らしきものが描かれていないんです。
そこにあるのは、一族の長のお葬式と、親戚一同が集まる中繰り広げられる骨肉の争い的なシーン。
不倫をする父親。その影でしくしく泣く兄と妹、怒り狂う母。
宝石やドレスに散財する母、何も言えない夫。
悪そうなお友達と夜な夜な遊びに出かける娘。
暴れる息子。
嫁姑の戦い・・・
そんなものが次々と出てきます。おや、《家事》は?もう一度表紙を見てみます。
ああああ、《家事》って。
炊事洗濯の「家事」ではなく、家庭の事情の「家事」ですか。あらためて表紙を見ると「A FAMILY MATTER」と書いてありました。
たしかに、「家の事」ですね。中国語ではそっちを「家事」と言うのですね。ちなみに「家仕事」的な「家事」のことは「家务(务は務の簡体字)」のようです。へぇ…へぇへぇへぇへぇへぇへぇ...と「へぇ」で頭の中が埋まりました。
読める文字が優先して目に入ってくるものなんですね。これが読めない漢字だったら英語にも目がいっていたと思うんですけど英語が書いてあった事すら気がつきませんでした。さらに、日本語にもある言葉だと、疑いもせずに自分の知っている意味として認識するようです。で、結果こういうことになるという。
そっちの家事なら泣きますね。まあ・・、泣くほど掃除が嫌いとか、泣くほど料理が嫌いなんて本、しかもわざわざ翻訳版まで出版されないですよね。
というどうでもいいような話。