ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

ずるい子、 バカな子(アホな子)

 

 

ずるい【狡い】

自分の利益を得たりするために、要領よく振る舞うさま。また、そういう性質であるさま。悪賢い。こすい。

ばか【馬鹿】

知能が劣り愚かなこと。社会的な常識にひどく欠けていること。つまらないこと。無益なこと。

 

 

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こどもの頃、お米、白いごはんが好きではありませんでした。

おとなになった今もそれほど好きではないし、ほとんど食べることはありませんが、特にきらいなわけでもありません。

こどもの頃はきらいでした。きらい、苦手、食べたくない。物心ついた頃からそう思っていました。家族の中でも「ごはん嫌い」はわたしだけ。

今でこそ「ごはんを食べない」という選択肢を握りしめて生きていますが、こどもにそんな権利はありません。

 

ちなみに、納豆とパイナップルとしいたけも好きではないのですが、こちらはきらいと言ってもさほど面倒なことにはならず「えー体にいいのにー(納豆)」「あー口の中チクチクになるのがイヤな人いるよねえ(パイナップル)」「うちのダンナもー(椎茸)」と、比較的受け入れてもらっている気がします。

幸いにして親の理解を得られたのか、納豆やパイナップルが無理やりわたしのお皿に乗ってくることはなかったですし、椎茸もなんとかやり過ごしてきました。

 

ただ、ごはんとなると話は別です。こども時代の食卓においてごはんを食べない、一人だけ別メニューという選択肢は存在していませんでした。食べられない理由があったわけではなく、ただ食べたくないというだけなのでしかたありません。

ごはんが食べ終わらない限り、わたしの食事は終わらない。

 

しょうがないので9割方は粛々とごはんを食べる日々なのですが、残りの1割、どうしてもどうしても食べたくない日は、思いつく限りの抵抗を試みます。

ある日の朝ごはん、食べ終わらないと幼稚園に行かせてくれないこと再三言われていたのですが、まさか本当に行かせないハズがないと高を括るクソガキちゃん。「まさか」本当に行かせてくれないとは……。おそるべし母。

泣きながらごはんを食べ、泣きながら雨の中、既に遅刻の幼稚園へ母に連れて行ってもらいました。

ある日の夕ごはん、食べたくないのでなかなか箸をつける気にならず、最後までお茶碗の中に残るごはん。小さなお茶碗に、大人だったら一口、二口で食べきってしまうくらいのちょぴっとの量。でも食べたくないと言ったら食べたくない。そこで、お箸がなくなれば食べられないと、キャラクターが描かれたピンクのプラスチックお箸を折るという暴挙に出たクソガキ。

何を言われたかは覚えていませんが、鬼の形相の父に、鬼のように叱られたことは覚えています。

小学校の1年生になっても、ごはん嫌いは治りません。治らないけれど、食べなくても済む方法、かつ叱られない方法はないかを考える力はついてきます。

ある日思いついたのが、父や母が見ていない隙を見計らって、ごはんを炊飯器に戻すという画期的な方法です。

ずる賢い?わたしは賢くはなかった。浅はかな、ただのずるい子、バカな子。

しめしめと戻したごはんは、炊飯器の中でキレイにお茶碗の形のまま。母が炊飯器を開けた瞬間、秒でバレました。

 

わたしがこの子の親だったら、なんて思うのか。

なんてバカな子なんだろうと思うのか。知恵がないのは百歩譲ったとして、なんてずるい子なんだろうと思うのか。バカでずるいとかって……ため息。今からこんなこすいことをするなんて、大きくなったらどんな人間になるんだろう。ああ、こわいこわい。

そう思うのでしょうか。

 

あの時、母はどう思ったのか、聞いてみたいような、絶対に思い出さないでほしいような。うん、記憶の闇の中にそっとしておいてもらおうと思います。

 

ごはんを食べない特権を享受するおとなライフ、ありがたや。