3月を目の前に、一気に春が進んだ上海。一気にいろんなものが進んだ世界。大きなため息をつきながら2月の最後の週末の空を見上げると、冬の葉のないプラタナスの街路樹に、にっくき丸いものが......
丸いのがまだついていない木、小さい丸いのがつきはじめた木、丸いのが丸々と膨らみ出している木。丸々としてきたあの丸いのはやがて道路に落ち、数時間もしない内に無数の綿毛となって道路にたまり、風に飛ばされ、日本の花粉症から逃れて上海にやってきたわたしに、花粉症の症状を引き起こすアレルゲンとなります。
いろいろなものを振り払い、春に進もうと上を向いたものの、もう何日もしない内に花粉症が本格的にはじまる(もううっすら鼻水は出ている)......とまた下を向いてしまいました。
その通りは、最近舗装をし直したばかりで、新しい歩道。
そうだ、いろいろと思うことはあるけれど、一歩一歩、新しい道を進もう。一歩一歩。
一歩一歩、一歩一歩?
上には上の、下には下の......いろいろあるなあ。
顔を上げ、通りに並ぶ商店を見る。その中のひとつに、果物屋さんがありました。上海の街は果物屋さんがたくさんあります。多くの果物屋さんは、贈答用の果物、そのままの果物、カットフルーツ、フルーツジュースを扱っています。
フルーツのバスケットや贈答用の箱を持っている人をバスや地下鉄でよく見かけるので、日本と同様ポピュラーな贈り物のひとつのようです。
そして、足跡の残ったその通りの果物屋さんを見るともなしに眺めていると、強烈な違和感を感じました。リンゴ、ゴンリ、ゴンリ、リンゴ?
逆さ文字のリンゴの隣には「胭脂紅」の漢字。カーマインレッドと言われる色のことなのか、カーマインというリンゴの品種なのかは不明ですが、どう考えても日本人向けのリンゴでもないですし(日本人はターゲットではなさそうな商店です)、逆さ文字の意味もまったくわかりません。
なんとなく日本語があると「あ、これは日本からの輸入品かな」とか考えるのでしょうか。いやいや、そんなわけない。
それ以上にわたしを混乱させるのは、右に書かれた文。
口の中に流れる甘いジュースを伴うクリスプクリック、
繊細な肉が口の中でゆっくりと溶けます
わかるような、わからないような、いや......
そんなどろろんとした、そんなすっきりとしない思いを残した2月でした。