ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

フェアモント・ピースホテル(和平飯店) で夏のお泊まり会1

 

上海の象徴ともいえる外灘(ワイタン/the Bund)エリアは、近年川の対岸も含めた広い範囲に、国内外の素敵ホテルがどんどん参入しています。是非とも新しい素敵ホテルに泊りたい、けれど、上海だからこその歴史的建造物にも泊まってみたい。

ということで、今年の夏休みは1929年に建てられた、緑の三角の塔が目印のフェアモント・ピースホテル(和平飯店)に2泊してきました。

黄浦江(フアンプー・リバー)沿いの西岸およそ1キロにわたって、19世紀後半から20世紀前半の租界時代に建てられた、22の西洋建造物が並んでいます。

それらのレトロなビルたちはほぼ当時の姿のまま、銀行、税関、ホテル、商業施設として今もなお現役。

ピースホテルは下の図の右から7つ目。先日の記事のロブションは右から9つ目。その前の広東料理のレストランは左から3つ目です。

simonfieldhouse.com

ピースホテルのことを書くにあたって、いろいろなサイトを見ていたら、ウィキペディアで美しいホテルの絵を発見。この絵を追っていったところ、上のリンク(The Bund - Shanghai)にたどり着きました。

作者のサイモン・フィールドハウス(Simon Fieldhouse)はシドニーを拠点に活動するオーストラリア人アーティスト。サイトには、ペン画、水彩画、彫刻など、繊細で美しいだけじゃなく、ウィットにとんだちょっとひねりのある作品もあり、見ているだけでワクワク。いつか個展に行きたい。

閑話休題。ホテルのはなし。

ロビーのハト(でもワシに見える)

「もしよろしければリバービューのそれはそれはビューティフルなお部屋に変更できますけどいかがいたしますか?今日ならとってもビューティフルな金額でご案内できます」と、チェックインの際、とてもビューティフルなフロントスタッフにお勧めされました。

うっかり金額を聞いてみると「ちょっと待って、すごいビューティフルなプライスよ、タラ〜ン」と軽く倍の料金のお部屋を案内されたので「ワオ、ビューティフル!じゃ、このままで」とありがたくお断り。いや、高すぎるから!ちなみにフロントの制服は私服で欲しいくらい素敵でした。

お部屋の素敵さもさることながら
足を伸ばしてもゆったりのバスタブ最高でした

ガスマスク常備
ここ数年よく見るようになりましたが、これってデフォルトでしたっけ

現在のピースホテルは、一大リノーベーションを経て、2010年に再オープンしたホテルなのですが、そうは言ってもリノベーションからもう10年以上経つわけで・・古さは否めないかな・・と来る前は思っていたのですが、心配ご無用。文字通り隅々まで丁寧に使われ、隅々まで掃除も行き届いていました。

意地悪な継母のように、あちこちを人差し指でしゅっと触ってみたのですが、どこもピッカピカ。ピースホテルで働くスタッフのプライドと心意気を感じました。清潔感あふれる歴史的建造物。

ウィキでみつけたサイモン・フィールドハウスの描いたピースホテル

上の絵を内側から撮った写真(現在は封鎖)

川面を向いた入り口は、現在は封鎖されています。なぜに・・・答えは「風水的に水面にドアが開くのはまずい」という理由なんですって。お金がじゃばじゃば流れてしまうそうです。

設計事務所のパーマー&ターナー(Palmer & Turner)が、風水を元に建設していたらよかったですね。そんなわけで、今はどうしても使いたい時だけ(オバマが来た時とか)ちゃちゃっと開けて、用事がおわったらちゃちゃっと閉めるんですって。

エレベータのタイル、すてき

サスーンハウス(Sassoon House)とも呼ばれるピースホテルの建物は、20世紀初頭、上海で100以上の物件を持っていたユダヤ系の不動産王ヴィクター・サスーン(Victor Sassoon)により、1926年着工、1929年完成。うっかりVidal Sassoon(ヴィダル・サスーン)と言ってしまう・・。

1920–30年代の租界時代の上海の繁栄は、サスーン家(またはサッスーン家)と上海の関係、つまり、それよりさらに時代を遡ったアヘン貿易など、彼ら一族を抜きにして語ることはできないのですが、それはまた別の話(・・この辺りを調べ始めるとやめられない止まらない)

開業当時はハイエンドな輸入品ブランド品を扱うショップ、銀行、オフィスビル、5階から7階にかけてはサスーン家が経営するキャセイ・ホテル(Cathay Hotel)が入っていました。

10階から上はサスーンの住居。こちらはザ・サスーン・スイート(The Sassoon Suite)として、現在はホテル一番の超豪華スイートになっています。

この他にもナイン・ネイションズ・スイート(Nine Nations Suites)という9カ国(中国、インド、イギリス、アメリカ、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、日本)をデザインした客室があったり、まあなんと豪華なことでしょう。日本のスイートには畳があったり、インドの部屋とかがあるあたり、なんか渋い。各国スイートの写真は下のウェブマガジンで見ることができます。

www.luxurytravelmagazine.com

そうして租界時代が終わりを迎え、1949年、サスーンハウスは中国共産党に召し上げられます。

 

つづく