ひつじ泥棒2

Who stole my sheep?

かき氷と物語とよしもとばなな|『海のふた』

 

アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国、今まで住んだことのあるどの国のどの街の本屋さんにも置いてある日本人作家というと、村上春樹大江健三郎、そして、吉本ばなな。(2003年から2015年までの筆名は「よしもとばなな」だそうです)

吉本ばななの小説には、限りなく非現実的で、儚げな、ふわふわふわーとした登場人物がちょいちょい出て来るのですが(うーあざとい。超吉本ばななっぽいわー)と斜に構えて意地悪なことを思ったりするわたしにかぶせてくるように、作中の登場人物が(うわーうざいわー)と毒づいたり、舌打ちしたり、悪態をついたり、時に呪ったりする人がちゃんと登場するところがわりと好きなところです。

吉本ばななよしもとばなな」というと、個人的にちょっと気まずい思い出があるわたし。初めて吉本ばななを読んだのは、高校の図書室で借りた『キッチン』や、初期のころの小説です。そのうちの1冊に『N・P』という小説があるのですが……、うちの高校のスタンプが押された『N・P』が1冊、ずっと(高校を卒業し、結婚のタイミングでいろいろなものを整理したときまで)、ずっと、ずっと実家のわたしの部屋の本棚にありました。

いやあ、見るたびに気まずかった。なんで返さなかったんだろう。なぜおきっぱになっていたのか、もうまったく記憶にございません。大変申し訳ございませんでした。

さて、最近今年初のかき氷を食べたのですが、氷をゴリゴリと削っている音、おそらく完成までにたくさんのトライ&エラーを繰り返して作られたであろうあまりにも美味しいシロップ、お店の人のかき氷への想い、これはもうひとつの物語だ——というか、わたしが思うくらいだからかき氷の物語がすでに存在しているにちがいない、そう思って検索して出てきたのが、よしもとばななの『海のふた』でした。

地元の西伊豆の海辺の町でかき氷屋を始めた主人公と、ひと夏だけやって来ることになった母親の親友の娘、2人の女の子の夏の話です。(すごい吉本ばななっぽい)

映画にもなっていて、映画を見るか、本を読むかでちょっと迷ったのですが、今年の抱負のひとつが読書ですので、そこは読書を選びました。

主人公の女の子が始めたかき氷屋さんのラインナップは、きび砂糖のシロップをかけた「氷すい」、西伊豆の特産品のみかんの濃縮ジュースときび砂糖シロップの「氷みかん」、抹茶とあずきの「氷宇治金時」、主人公がかき氷屋さんを始めるきっかけとなった「氷パッションフルーツ」です。そして途中から「氷エスプレッソ」が登場します。

食べてみたいです。いや、わたしもかき氷屋さんやりたい。(もう女の子じゃないけど)