ピンポーン
はいはーい、玄関を開けると20代半ばの女性が1人立っていました。
「すみません、猫を探しているんです」
A4用紙にプリントアウトした猫を探していますのチラシを手渡されました。おおおおなんとーーー!猫ちゃんかわいそうにーと思いながら真ん中の猫の写真に目をやると……。
チラシの真ん中に猫の写真が載せられているのですが、あまりに荒い画像で、世界中の10分の1のネコはこのタイプに当てはまるんじゃないかしらという、かろうじて猫だということだけはわかるレベルの写真。猫を探す目的で作ったにしては、お世辞にもうまくできているとは言い難いチラシです。
(ポスティングではなくわざわざ手渡しで人の家を回るくらいなんだから、真剣度は高いですよね?いやいやいや、いくらなんでもこの写真でいなくなった猫が見つかるはずはないよね?)いろんなことを考えながら「あ・・・どのくらいの大きさですか?」と聞くと、
「あ・・・ふつうです」
その答えがもうふつうじゃない!そしてこのポスターも見れば見るほど怪しい。
荒い画像以外の猫の情報ゼロ。どこでいなくなったのか、いついなくなったのか、猫の特徴、猫の名前だって書いてない。書いてあるのは上の情報だけです。(そのままチラシの写真を貼るのがこわくて打ち直してみました。ちなみに本物の猫の写真はもっと荒い写真でした。)
怪しさはむんむんなのですが、一応もう一度「おうちどの辺ですか?」と質問を投げかけてみました。同じ町内の人なら「1丁目です」などと丁目で答えるだろうし、近隣の町内ならば「XXXです」と町名を答えるはず。すると、彼女はこう言いました。
「上の方です」
まさかの「上の方」とは。あまりにの斬新な答えにびっくりです。もちろん我が家の上の方に猫山さん(仮名)はいらっしゃらないんですけどね。
「じゃあ」と女性が軽く頭を下げ出て行くので気になって外を見ると、同じくらいの年齢の男性が1人立っていて、ふたりでさささと去って行きました。いくらなんでも怪しかろう。ちなみに去って行った側のお隣の家には寄った気配はありませんでした。
なんでしょう、これ。猫探し?何探し?いなくなった猫を探しているのではなく、猫が欲しくて猫を探しているのかしら。いやいや、そんなので他人の家を回ったりしないですよね。何が目的なんだろう……
猫山さん(仮名)の携帯にかけたら、猫ギャングの巣窟のようなところにつながって、一生猫にかしずく奴隷要員として連れて行かれてしまうのかもしれません。そんなことになるのなら、我こそはと志願者が多い気もするのですが……