長いこと猫や犬と暮らしたいと言い続けていたものの、なかなかその機会はやって来なかった。いつその日が来てもいいようにと周りの人にも言い続け、猫と住める家ということでこの家も決めたのに、1年も経たないうちに転勤になってしまったし。
そこからさらに数年が経ち、昨年この家に戻ってきた。いよいよ、いよいよだ!
とは言え、朝起きたら窓の外で運命の猫が鳴いていたとか、雨の日の帰り道に段ボールに入った子猫と運命の出会いとか、そんなYouTubeのような出会いは起こらず・・。
ある日突然猫がやってきて一緒に暮らし始めるなんて、そんなことが起こるわけないのに(都市伝説なのだろうか)。どちらかというと現実主義なタイプなのに、なぜ猫のことに限って夢みがちになるのだろう。このままでいたら一生我が家に猫が来ないかも・・と夏の終わりに思い立ち、譲渡会に参加してきた。
猫との出会いを求め早10年・・いよいよ運命の出会い。
となることはなかった。運命の出会いなんてものはないのだということを10年かけてもまったく学べていない自分にがっかりする。振り向いた先にいる猫全てが運命の出会いで、みんな可愛いすぎるのだ。みんなうちに来たらいい。
そんなわけで、1度の譲渡会参加で決めることができず、次の週末にも、次の週末にも譲渡会に足を運んだ。東京では毎週末何ヶ所も譲渡会が開かれているのだ。
譲渡会と譲渡会の間も、どんな子がうちに来るのか、男の子か女の子か、短毛か長毛か、子猫か成猫か、黒い子か、グレーの子か、三毛猫か・・、何度も話し合ったし、出会った猫たちはみんなそれぞれ可愛かった。
こんなにたくさんの(本当にびっくりするくらいたくさんの家族を待っている猫がいるのだ)猫の中から一匹だけに決めるなんて、無理なんじゃないかしら。3度目の譲渡会の途中でやっと気がついた。
3度目の譲渡会の途中、一旦会場を出てお茶を飲み、再び会場に戻った。わたしたちがお茶を飲んでいる間にも、ちょっと気になっていた猫たちは、既に新しい家族の猫となっていた。
そしてわたしは心を決め、夫に言った。
「わたし、決められません」
つづく